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- 納得できない遺言が出てきたら この遺言は無効?有効?
遺言の有効・無効の判断 ~この遺言は無効?有効?~
1. 遺言が争われるケース
遺言が争われる場合として、ご家族が亡くなられた後、想定もしていなかったような遺言が後から出てくる場合があります。
たとえば、お父さんが、晩年、寝たきり状態となり病院に長期間入院し、病院で亡くなりました。お父さんのお通夜には、20年以上顔を見せていなかった兄が来て、「実は父さんに遺言を書いてもらっている」と言って、遺言書を見せられました。
遺言書を見ると、そこには「財産は全て兄に相続させる」と書かれていました。
あなたが弟さんの立場だったら、どうされますか?
遺言が争われる場面では、このようなケースが多くあります。
2. 遺言が無効となる場合
遺言が無効となる場合として、遺言の種類に応じて説明致します。
(1) 自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言とは、遺言者が、自筆でその全文、日付および氏名を書き、押印することで作成することができる遺言です。
この自筆証書遺言は、遺言の中で、最も簡単に作ることができ、それだけに最もよく使われる遺言でもあります。
しかし、作成が簡単な分、紛失・偽造・変造の危険があったり、内容が不明確だったりするという理由で遺言の有効性が争われやすい遺言でもあります。
自筆証書遺言では、次のような場合に遺言が無効となります。
① 遺言の法律上の決まりに反している
自筆証書遺言は、作るのが簡単とはいえ、遺言者が、その全文、日付および氏名を自筆・押印する必要があるなど一定の決まりがあります。このような決まりを守っていないと、それを理由に遺言が無効とされることがあります。
たとえば、パソコンで遺言を作成・印刷し、そこに署名押印したとしても、これは全文が自筆されていないことになるので、無効となります。
また、高齢者が遺言を作成する際、自分一人では手が震えて書くことができないため、誰かに手を取ってもらって書いた場合には無効となる場合があるので、注意が必要です。
印鑑を押してなかったとしても、無効となります。
したがって、もし遺言がこのような形式的要件を満たしていなければ、遺言が無効となります。
弁護士にご相談される場合には、弁護士が遺言をチェックいたしますので、後で無効とされるリスクをなくすことができます。
② 遺言能力がない
遺言能力とは、遺言を有効にすることができる資格をいいます。
原則として、15歳に達した者であれば遺言能力があります(民法961条)。
しかし、自分の遺言の意味(誰が何の財産を取得するか等)を理解することができないような場合、遺言能力が否定され、遺言は無効となります。
たとえば、亡くなった方(被相続人)が、遺言を作成した頃、認知症であった等遺言の意味を理解していたか疑わしいような事情がある場合、遺言作成時に遺言能力がなかったため遺言は無効となる可能性があります。
実際に遺言能力が否定されるか否かは、様々な事情を考慮した上での法律的な判断によるため、生前に認知症だと診断されていても遺言能力が認められる場合もありますし、逆に認知症と診断されていなくても遺言能力が認められない場合もあります。
弁護士に依頼された場合、医師による診断だけなく、生前の被相続人の様子、遺言の内容等の様々な事情を収集・分析し、遺言能力の有無を争うことができるかを判断いたします。
(2) 公正証書遺言の場合
公正証書遺言とは、公証人が、適法かつ有効に遺言がなされたことを証明する公正証書という文書によってなされる遺言です。公正証書遺言を作成するためには、証人2人の立会いの下、公証人の面前で、遺言者が公証人に遺言の内容を口で伝え、公証人は遺言者の意思を文書にまとめ、遺言書にします。
このように作成された公正証書遺言は、公証人が介在することから、遺言が無効とされることは極めて少なくなります。しかし、次のような場合は、公正証書遺言が無効とされる可能性もあります。
① 遺言能力が否定される場合
自筆証書遺言と同じで、遺言者が、遺言する時に、遺言の意味を理解できる能力がなかった場合、公正証書遺言は無効となります。
もちろん、公証人は、遺言者が、遺言の意味を理解できているか確かめながら遺言を作成するため、自筆証書遺言に比べ、遺言する時に遺言能力がなかったと判断されることは多くありません。
弁護士に依頼された場合、弁護士は、公正証書遺言を作った時、遺言者は遺言の意味を理解できる状態だったのか、公証人はどのようにして遺言者の遺言能力を確かめたのか、公証人のした確認は十分といえるのかを調査し、公正証書遺言が無効とされる可能性の有無を判断いたします。
3. 遺言が有効である場合
遺言が有効な場合には、一切財産を相続することができないのでしょうか。答えはノーです。
兄弟姉妹以外の相続人は、最低限の取り分として遺留分が認められています。その遺留分の額は、原則として法律上本来もらえるはずの相続分の半分となります。*
弁護士に依頼された場合、弁護士が、まず遺言の有効を検討し、その上で遺言が有効である場合は、遺留分を算定し、遺留分の請求を行います。
*相続される方が直系尊属(亡くなった方の父母やそれより上の親族のことです)のみの場合は、本来もらえる相続分の1/3となります。